革ジャン⇔スーツ

毒は持っていません。毒と感じるのはあなたの感性。

私は酒を飲まない

中学を卒業してすぐの16歳の時、私はガソリンスタンドでバイトをしていた。欲しいギターのために、地域で1軒しかないあの楽器店で輝いているあのギターを手にするため、高校の入学を待たずに中学最後の春休みからガソリンスタンドで働き始めた。それまでの私の学生生活は部活もやらずにダラダラとしていたから、そこそこの身長はあれど体重は100kgに近いものとなり、華麗なる、そして完全なるデブであった。しかしながらこのガソリンスタンドのアルバイトで朝から晩まで余計な物も食わずに一心不乱に働くと2ヶ月くらいで30kg以上痩せた。その痩せ方、お前ヤバいんじゃないの?と周囲が心配していたが、本当にヤバいのは動きもせずに食い続けていたあの頃の私である。バイトの給料で念願のギターとスリムな体型まで手にした私はすぐに彼女が出来た。ガソリンスタンドで一緒のマサミ(仮)である。コロコロとよく笑う可愛い彼女。暑い時も寒い時もキャッキャウフフとそのガソリンスタンドで過ごしていた。そしてそのガソリンスタンドである変化が訪れる。夏のイベントでキャンペーンガールが1ヶ月ほど一緒に店頭に立つとのこと。昔よくあったガソリンとクレジットカードがごっちゃになったこのカードを私の笑顔とちょっとベタベタ触りますけどそれと引き換えに作りませんか系である。5歳くらい年上であったと記憶している。そんな事に興味は示さず相も変わらずマサミとイチャイチャしていたが、ある日ガソリンスタンドで一緒に働くノリオが私に言った。「今日であの子ら終わりやろ。キャンペーンガールの人達のマンションで家飲みするからお前も付き合えや」マサミがいるから嫌だ断るも、お前が欲しがってたあのディストーションやるからという甘い言葉ですぐにノリオとマンションへ向かう私。基本的に私は女性が得意な方ではないが、まぁニコニコしてれば良いかと軽い気持ちでそのイベントに参加した。高校生の私からするとかなり大人で綺麗な女性であった。男女2対2で酒とお菓子を囲みながら、ベラベラと話すノリオの話に相槌を打って飲み慣れない酒を飲んだ。カパカパと。私は酒を飲むと異常に顔が赤くなるから今でも酒は飲まないが、飲んでも酔わない。記憶を失うなんてことは一度も無い。で、あるから飲んでいる時の記憶はいつもハッキリしている。そうだ。あの時、酒を飲んで仰向けに寝ている私の上にそのキャンペーンガールは覆いかぶさっていた。ノリオともう1人の女性はもう部屋にはいない。酔ってニコニコと笑う彼女は私にキスをする。どんどんエスカレートする彼女を見つめながら、あぁ…ヤバいなぁ…どうしようかなぁ…と思いながら彼女を見つめていた。私の中で天使と悪魔が戦う。頑張れ天使と声を掛けようとしてすぐ、ロメロスペシャルで瞬殺されていた。ダメだったか…。やはり煩悩には勝てないのかと諦めたその瞬間私の口から出た言葉は「マサミ」であった。その名前を聞いた彼女はケラケラと笑いだし「彼女いるもんね〜w 大事にせえよ!w」と私から離れた。ふと天使の方を見ると、天使は既に息絶えている。では何だと辺りを見回すと、そこにはビビリマンがブルブルと震えながら悪魔に銃口を向けて立っていた。悪魔も息絶えている。そうか。私はビビったのだ。ビビって彼女の名前を口にし、このセクシャルな場面から逃げたのだ。「ごちそうさまでした!」という訳の分からない事を口走りながら私は家に帰ったのである。次の日ノリオにその顛末を話すと「なんやあの子お前の事気に入ってるて聞いたからお前連れてったのにお前アホやな」とあれが仕組まれたものだと知り、私はノリオに電気アンマを失神・失禁手前まで喰らわせた。そして私はそれから何度か「女と酒」でドツボにハマることとなる。何故私は酒を飲まないのか。理由はそこにある。酒は煩悩の燃料だ。気が向けばまた「女と酒episodeII」を書いてみようと思う。それではまた。さよなら。さよなら。さよなら。

 

フィクションです。