革ジャン⇔スーツ

毒は持っていません。毒と感じるのはあなたの感性。

Air Rhythm

私はお腹が弱い。弱いと言っても普段は便秘症で、酷い時はピンクの小粒を荒ぶって飲む程度には緩い感じではないと自分では思っている。私のお腹が緩くなるのは決まって「辛いものを食べた翌日」と限定される。その当日になると、いつもにこやかな私の表情は一変し、終始ピリピリとした緊張感・少し影のある哀愁漂う中年の表情と化す。

朝から腹の調子が悪い。昨日食べた激辛ガパオライスが原因である。私は辛いものがあまり好きではない。では何故食べるのか。私が聞きたい。自分に問いたいのだ。何故食べるんだと。お前は辛いものが好きではない、そして次の日お腹痛くなるのが分かっているんだろう。あの辛味に美味しさなど感じていないだろう。何故食べるんだと。心に問いただしたが答えは分からない。あれば食う。ただそれだけである。

そんなこんなを考えているうちに、色んな業務をこなしながら腹の痛みが少し変わった気がした。危険な痛みである。危険な痛み、それはどんなものか。腹から背中にまでジワジワと鈍痛が広がる痛み。これはある程度我慢できる痛みではない。すぐにトイレに行かなければいけない。しかしながらここは現場である。私は汚いトイレで排泄出来ないタイプの人間なのだ。汚いトイレで排泄するくらいなら漏らした方がマシだと、健康の為なら死んでもいい的な言わば少しイっちゃってる⤴︎(ナダル参照)感覚の持ち主なのである。近くの商業施設まで約400m。そこまで行くしかない。歩くしかない。私は若干の内股と外股を繰り返す変な動きでオアシスに向かった。Siriの力を緩めないように、気をそこに集中させないように、振動をなるべく与えないように、まるで剣道の達人のすり足を思わせる足さばきで400mを横移動した。

顔面からゴマ油吹き出しながら到着したその多目的トイレに腰を下ろし、そして安堵した。ふと膝まで下ろしたパンツに目をやると、10円玉大の茶色いドットが目に飛び込んだ。ほう…。やってしまったか…。私は自分自身に言い訳のように言ったよ。「これは漏らしたうちに入らないんじゃないか?」と。これはオナラの延長線だと。スラッジ混じりのガスだと。ちくしょう、多目的トイレでヨロシクやってる奴もいればこうやって絶望している初老もいるんだ。不公平だ。人生はイロイロ、男もイロイロなのか。頭の中で現実逃避を繰り返しながらふと多目的トイレの大きな鏡に写る絶望した初老の背後を見ると、そこにはニヤリと笑う大きなカマを持った死神がいて、そして目があった。

何度も何度もペーパータオルを濡らして汚れを拭き取る。私は素人ではない。トイレットペーパーを濡らしたならばすぐにその紙はボロボロバラバラになり二次災害へ突入する。私がそんなケアレスミスはしない。ここでパンツをペーパタオルで拭いているのはビッグミステイクだがそんなことはもうどうでもいい。すぐに乾いてくれるエアリズムのパンツに歓喜しそして安堵した。いける…!鼻歌が出る程度にはホッとしたのか私の足はリズムを刻んでいた。もちろんその時の歌は「悲しみが止まらない」である。切なすぎるバラードが多目的トイレをこれでもかと埋め尽くした。

インターネッツにかじりついている貴様らももういい年だろう。気をつけた方が良い。我々くらいの年齢になるとSiriのバルブが腐っている。そしてリスクヘッジとしてパンツを濃色のエアリズムに変えるんだ。明日は我が身だ。

私の今回の粗相は「漏らした」うちに入るのだろうか。私は「ノーカン」としてやり過ごしているがどうだろうか。いや、どうだろうかもクソもない。私はノーカンとしてもう処理済みである。辛いものはもう食わないと心に誓って今磯辺揚げとビールを味わっているところだ。私もいい年だ。同じ事を何度も繰り返してはならぬ。風呂に入って今日の汚れをキレイさっぱり全て落とすのだ。

 

そして私は今日も、風呂上がりにまたエアリズムのパンツを履くのである。

 

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