革ジャン⇔スーツ

毒は持っていません。毒と感じるのはあなたの感性。

ポイントカードの支配と圧力

寒い。私は寒さにすこぶる弱い。さながらヒートテック的に全身に纏った鎧のような贅肉を駆使してでも寒いものは寒い。人混みを避けるように設置された喫煙所で重たいグレイの空を見上げながら紫煙をくゆらせ、贅肉をスマホで変換すると贅沢な肉と書くのだな、と画面から目を離しコンビニに足を向ける。暖かい飲み物の陳列コーナーで迷わずBOSSの微糖を手に取りレジへ向かう。FIREでもGeorgiaでもいけない。BOSSの微糖。彼らは珈琲に対する想いが本気すぎて缶コーヒーの本来の意味を見失っている。缶コーヒーの本来の意味、細かく説明したいところではあるが今はただこのブログ記事の文字数を稼ぐためにダラダラと書いているだけなので割愛させて頂きたい。というよりも缶コーヒーの意味など私は知らん。レジでは外国人が手際悪く商品を捌いている。「KOOLの8mgを」私は低くダンディズムMAXの美声で発注をするも「アン?クーン?ナニ?」と、ハッキリ喋れこのくされジャップがと外国人レジのオデコに書かれた文字を私は読みながら「78バン2コ」とどもりながら返した。粗い仕草でタバコと缶コーヒーを袋に詰めながら、いつものように「ラクテンポイントカードハ?アリマスカ?」と質問される。何パーセントの還元なのかは知らないが、どこに行っても「貴様は?ポイント要らねえのか?」と聞かれてるような錯覚をする私は少し苛立ちながら「ナイデス」と答えるのである。どこかのニュースサイトか何かで読んだことがあるが、ポイントカードなるものはどこの誰がいつこの店でこんな物を買ってるみたいなデータを収集するために僅かなポイントを還元していると記憶している。私はそんなものに協力する気は毛頭ない。これから世界はセブンイレブンGoogleAmazon楽天に支配され、我々は全てのデータを吸い取られた後に気付くのだ。何もかもがあのモンスターのような企業に掌握されていると。規則正しく配列、監視、管理された全ての人間達はスマートフォンGPSでGoogleMAPに落とし込まれ、予想通りの、データ通りの動きを見せる。そこで監視員はGoogleMAPを監視しながら異常な動きを見せるある人間を発見する。わべである。すぐにコイツのデータを調べろと部下に指示を出す。部下は焦りながら「ありません… わべのデータは… なにも…」「どういうことだ!!!すぐに個人情報から全て調査しろ!!!」「調べましたが全てデタラメのようです… 」「なんだと… コイツの動きは予測不能だということなのか…」そして私は暗黒企業からスパイとして声が掛かる。動きが全く読めない、素性が分からない私を買いたいとの事だった。提示額は2000万ドン、悪くない額である。私に課された使命はポイントカード提示を拒否する者をギッタンバッタンと如何にポイントカードがお得なのかを説き伏せて欲しい、その際に必要なスーツなどは洋服の青山フレッシャーズ応援から選んでも構わないとの事であった。私は二つ返事でOKを出

 

「…ミマセン」

 

「スミマセン!!!」

 

気がつくとレジの外国人が鬼のような形相で私を睨みつけていた。「オカクサンナランデルカラ!ハヤクドイテ!」どうやら私は妄想の海に堕ちていたようだ。煙草とぬるくなった缶コーヒーをひったくるように取り、そのコンビニから逃げるように立ち去った。そして再び喫煙所にて煙草に火を点け、空を仰いだ。私にはポイントカードなど必要ない。それは我々を支配しようとする得体の知れない企業に立ち向かうためでは無く、いつもコンビニで手にするデラべっぴん購入のデータを残さないためである。

 

※ この物語はフィクションです。登場する人物のみ実在します。